Masuk村野忠人は特に秀でたところもない、クラスでも地味な存在。 三年間クラス替えもなく退屈な日々を送っている彼は、“勇者日常譚”というタイトルの小説を書くことを楽しんでいた。 三年D組には前守剣、須磨法子、宗田涼香、そして夕島英雄という一際目立つ四人組がいた。 実は彼等こそ、勇者日常譚に出てくる剣士ルギー、魔法使いリコ、僧侶ロッカ、勇者ディオのモデルだった。それだけでなく、物語そのものが三年D組をモデルにして書いたものだった。 そんな中、クラスに姫川聖羅という少女が転校してきたことをきっかけに、クラスメイトたちの意外な一面を次々と見ることになってしまい、物語は思わぬ方向に進んでいくことになる。
Lihat lebih banyak王都サンディー。
世界地図に於いても、西の外れの方にある、小さな国である。
そこを治めているのは、まだ見た目若き一人の女王。凜とした佇まいと冷たい瞳から厳格な雰囲気を醸し出しているが、時折見せる優しい表情も相まって国民からの信頼は非常に厚い。彼女の名は「マリア」という。
そんな彼女に向かって、四人の若い男女たちが向かって跪いた。
「其方たちよ。この度の働き、誠に大義であった」
「勿体なきお言葉、ありがとうございます」
「面を挙げてよいぞ。私もこの国の女王として鼻が高い。其方たちを立てた甲斐があったというものだ」
「ははっ」
勇者と呼ばれた男が顔を挙げると、続いて他の三人も顔を挙げていく。
「まず、戦士ルギーよ」
「はい!」
分厚い鎧を纏った戦士が大声で返事をした。
「この前の、国対抗の武闘大会にて、見事な成績を収めたこと。大義であった」
「お褒めいただき、ありがとうございまっす!」
その大柄な体躯に似つかわしい大声を発すると、女王も若干の苦笑いを混ぜて頷いた。
「次に、僧侶ロッカよ」
「はぁい」
水色の修道服に身を包んだ、桃色の髪の女性が柔らかく返事をした。
「この前、怪我をした老人を無償で保護したそうだな。感謝状が届いておる」
「まぁ、そんな。わざわざご丁寧に……どういたしまして」
僧侶がクスッと微笑み、女王もそれに釣られて微笑んだ。
「そして次に、魔法使いリコよ」
「はい」
黒いローブの女性が、知的な眼鏡越しに視線を向けて返事をした。
「其方がこの前書いた魔法学の論文が、国外で賞を取ったそうだ」
「本当ですか……? ありがとうございます」
堅そうな魔法使いの声に、女王も神妙に頷いた。
「そして勇者ディオよ」
「はっ!」
青い髪の好青年が、改まった声で返事をした。
「お前の功績、見事であった。特に……」
……
………………
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「ふぅ……」
書き終えた文字の羅列を眺めながら、僕はひたすら溜息を吐いていた。
続きが思いつかなくなると、僕はヤケクソになって文字化けをさせてしまう。そういうわけなので、この文を読んでいる皆様、お手持ちのスマホやPCは正常ですのでご安心ください。
ノートパソコンをそっと閉じて、一旦立ち上がって伸びることにした。
「春休み丸々使ったけど、結局ここから進まずじまいだったな」
既に時刻は七時を過ぎている。朝からパソコンを凝視しっぱなしも辛いし、そろそろ着替えて学校に行かなければならない。
電源を切り落としたのを確認すると、僕は制服の袖に手を通した。
朝ご飯を食べて、鞄を持って学校に向かっていく。
道中の桜並木が本当に目に痛い。花弁も地面に斑点のように降り積もっていて、まるで違う景色のようだ。
それ以外は特別変わったところのない日常。
強いて変わったことと言えば、
「おはよう!」
「久しぶり! 元気にしてた!?」
「同じクラスになれるといいね!」
「バーカ、うちの学校はずっとクラス替え無しだろ!」
そんな喧噪を耳にしながら、僕は三階の教室へと向かっていく。
着いた先は、三年D組。
一応、「おはよう」とこっそり挨拶だけ口にして、僕は席に着いた。三年間クラス替えがないおかげで、教室も一階上になるだけで間取りが一緒なのはありがたい。
畑路高校の生活もついに三年目になる。
まぁ、僕はいつも通り平々凡々と、教室の隅っこの方で緩く日常をやり過ごしていくだけなんだけどね。
ただ、僕はそれが退屈だとは思わない。
何故なら、このクラスには……
「おはよう!」
「おはよう」
「おはよー」
「おーっす!」
誰よりも人気者の、四人組がいるからだ。
「
「
「
次から次へとクラスメイトたちが前の席に群がっていく。
それもそのはず、そこにいるのは……
「ええ。そうよ。まさかあれが入賞するなんてね」
「警察から連絡があったときはびっくりしたよぉ」
「ま、うちのチームの実力なら当然だな!」
思い思いに自分の功績に対する感想を述べる三人。
そして、もう一人――
「みんな凄いよ。僕なんか大したことやっていないのに」
そういって謙遜気味に笑顔を振りまく男子生徒がいた。
「
「あれはただ、自転車のチェーンが外れていたから直してあげただけだよ」
「でも、なんか頼もしかったよねぇ、あれ。あの子、うちの学校みたいだけど、また会えたりして」
「あはは、まさかそんなことって……」
――ふむ。
夕島くん、そんなことをしていたのか。
僕は懐からメモ帳を取り出して、『勇者は女性を助けた』とだけ書き記しておいた。
これでようやく話が進みそうだ、と心底安堵した。春休み中は何も話が進まなかったので、帰ったら早速続きを執筆しよう。
――みんな相変わらず、だな。
新学期早々、彼らが変わっていなくて安心した。
彼ら四人――
クラスの中でも一際ステータスの高い、人気の四人。
クラスで地味な僕なんかとは違う。うらやましくもあるが、尊敬もできる。彼らを見ているだけで、この鬱屈した教室が明るく見えてくる。
だから――
僕は今、彼らをモデルにファンタジー小説を書いている。
この平凡すぎる日常を、僕の手で異世界へと変貌させてみせる。
それがこの僕、
故に、僕は心の中で彼ら四人をこう呼んでいる。
“勇者パーティ”、と――
そう、これは。
平凡な僕のクラスと日常生活を、非日常のファンタジーに書き換えて楽しんでいる、
どこにでもいる普通の村人にして語り手な僕の他愛のない物語である。
謔ェ蠖ケ莉、螫「縺」縺ヲ險闡峨�縺ゅ¥縺セ縺ァ繧ょ卸菴懊☆繧句�縺御スソ縺�ィ闡峨〒縺ゅ▲縺ヲ縲√ヵ繧。繝ウ繧ソ繧ク繝シ荳也阜縺ョ荳ュ縺ァ蜃コ縺ヲ縺阪◆繧牙℡縺�ク崎�辟カ「あら、ひっさしぶりー」 盛り上がっている勇者パーティのテーブルに、見知らぬ女が話しかけてきた。「貴方は……」「この国の姫になったんだってぇ? 女王様の養子になったって聞いたけど。アンタみたいな弱小貴族の小娘が、随分と出世したもんねぇ」「ひ、人違いです……」「うっそぉ、貴方、セーラじゃん。あ、ここではセーラ姫って言わなきゃダメだっけ」 嫌みったらしく、そして同席の面々にわざと聞こえるように言ってきた。「おい、アンタ」ルギーが睨みながら席を立った。「顔見知りか知らんが、そんな悪口を言いに来ただけならとっとと向こうへ行ってくれ。酒がマズくなる」「あら、ごめんあそばせ。それじゃあ失礼」 手を振りながら、にこやかに彼女は去って行った。 皆が姫の方を見つめる。彼女は唇を噛みしめて俯いたまま、小刻みに震えている。「腹立つ女だな」「友達ってわけでは……なさそうね」「……すみません、わたくしはお先に失礼します」 セーラ姫は顔を隠し、そのまま席を立って酒場から出て行った。「お、おい……一人で帰って大丈夫か?」「かまわん。表に城の遣いを待機させてある」 今度は一同が女王へ視線を向けた。「女王様、姫の様子が可笑しかったようですが……」「あぁ。それにしても厄介なことになったな……」 女王もまた、怒りに震えているのか顔を強張らせている。「先ほどの女性は一体?」「隣国のさる貴族の一人娘、アーヤだ」「ご令嬢だったのか。いや、だからって先ほどのあの態度はないだろう。女王様も流石に黙っていられなかったんですか?」「仕方あるまい。彼女の家は、隣国でもとびきりの権力を持ち合わせている。父親の鶴の一声で、この国に戦争を仕掛けにくることも容易だ」「そうだったのですか……」「あのう、つかぬことをお尋ねしますが」ロッカが手を挙げて発言した。「先ほどあのご令嬢が『女王の養子になった』とおっしゃっていましたが、もしかして姫様って……」「あぁ、そうだ。彼女は……私の養子として迎え入れた」 それを聞いた途端、勇者一行は目を丸くして驚いた。「実の娘さんではなかったのですね」「そうだ。隣
「おかえり。遅かったね」「あぁ、うん。色々あって……」 誤魔化しにならない誤魔化しを呟いて、僕たちは元の座席に着いた。 どうやら夕島くんの歌がちょうど終わったタイミングのようだ。Mrs. GREEN APPLEのケセラセラを歌っていたみたいだけど、なんかイメージ通りすぎるチョイスで特に驚きはない。強いて言えば姫川さんがいないタイミングだったのは残念だったのか良かったのか。「それじゃ、次は私がいくわね」 須磨さんがマイクを手に取った。画面に映し出される曲名と共に、メロディーが流れ始める。 ――って、あれ? この曲って。「あ、これってゼロ執事のオープニングですよね」「そうそう! 姫川さん知ってるの!?」「はい、実は全巻揃えています!」「本当!? 良かったら一緒に歌おう!」「はい!」 姫川さんもマイクを手に取って、歌を歌い始めた。ちょうどデュエット系の曲だったので、上手いこと二人で息を合わせていっている。 僕もゼロ執事は見ている。大ファンというほどではないが、話は面白いし、女性のファンが多いけど男性でも純粋に楽しめる作品だ。 姫川さん、さっきアニメの曲が好きって言ってたっけ。だとしたら不思議じゃないけど、須磨さんもこういう作品好きなのかな? そんなことを考えながら、僕はコーラをチビチビと飲みながら二人の歌を聴いていた。二人ともかなり上手い。姫川さんはあまりカラオケには行かないって言っていたけど、綺麗な地声から形成される歌声が心地よく聞き入ってしまう。 しばらく彼女の歌を聴いていると、横から僕の腕をツンツンと突く感触がした。 ――なんだろう? 横を見ると、いつの間にか妃先生が隣に座っていた。 先生はスマホを覗き込みながら、何かを打っている。 みんなが歌に夢中になっている中、先生は画面をこっそりと見せてきて、『何かあったのか?』 ギクリ―― どうやら先生は姫川さんの様子に違和感を覚えたようだ。 従姉妹同士で付き合いの長い先生のことだ。下手に誤魔化すのは難しいだろう。 僕は観念して、自分のスマホを覗きながらメッセージを打ち込んだ。『さっき、姫川さんの知り合いらしき人と偶然会いました』 僕は見せると、先生は眉間に皺を寄せながら、またスマホを見せてきて、『どんな人だった?』『確か、れいじょうって名前の女子だったかと』 そ
話は今日の夜に遡る。 急遽企画された歓迎会は、結局学校付近にあるカラオケボックスに決まった。他の店だと高いし、予約も取れなかったから残当なチョイスだ。 で、そんなカラオケ店の個室に、僕たちは集められたわけで――「そんじゃ、みんなグラスは持ったな!」 意気揚々とドリンクバーのグラスを掲げる前守くん。 僕は彼等から少し離れて隅っこのほうに座ることにした。 正直、「なんで?」と思わざるを得ない状況なんだけど……「まだよ。早とちりしないの! 帰ってきてない人がいるでしょ!」「誰だよ、トロくさいのは!」「主役の姫川さんですけどぉ」「あっ……」 赤面して俯いてしまう前守くん。 確かに遅いけど、多分お花を摘みに行っているだけだろう。 それよりも、このメンバー……「思ったより集まらなかったね」「しゃーねぇだろ! みんな部活だとか塾だとかで忙しかったんだから!」「歓迎会ならもう少し日にちを決めてからでも良かったでしょ!」「うるせぇ! こういうのはな、鮮度が命なんだよッ!」「意味がわかんないんですけどぉ」 そういうわけで集まったのが、主役の姫川さんと主催の前守くん、そして夕島くんに、須磨さん、宗田さん。 それに加えて、僕―― 正直、居心地が悪い。黙ったままドリンクバーのメロンソーダをぶくぶくと泡立てても気付かれていない。 さらに、あと一人――「全く、もっと前もって言ってくれたら良い店を安く予約できたのだが……」「先生、こういうのは生徒の自主性を重んじてやるから意義があるんですよ」「適当なことぶっこいてんじゃないの!」「まぁいい。たまには生徒と行くカラオケというのも悪くはないな。よし、久しぶりに歌うか!」「お、先生結構歌う方ですか!?」「まぁな! 手始めにX JAPANあたりを……」「いいですね! 先生の歌、楽しみにしています!」 僕を除く男子二人と先生が、強烈に騒ぎ始めた。端末に歌を予約すると、メロディーが流れ始める。 しばらく僕たちは先生が歌うX JAPANの紅をただ聴いていた。イメージ通りというか、激しい曲を無駄に激しく歌う先生に感服している。「よっ! 先生サイコー!」「カッコいいです! 先生!」 そしてそれを盛り上げようとしている前守くんと夕島くん。まるでどこかの企業の接待だ。この二人は将来上手くやっていける
豁楢ソ惹シ壹→縺玖ィ縺」縺ヲ繧九¢縺ゥ螟ァ謚オ縺昴≧縺�≧縺ョ縺」縺ヲ繧ソ繝蜊倥↓驕翫�縺溘>縺�縺代�蜿」螳溘□繧医� 城下町の外れにある、古びた酒場。 日も大分落ち始めてきた頃、店内は任務を終えたばかりの冒険者たちで溢れかえる。そして、一杯、二杯と酒を飲み干していく度、彼等の喧噪が店内にこだまするのであった。 そんな店に、馴染みの顔と、まったく見知らぬ顔が同席していた。「この度はわたくしをこのような場にお招きいただきありがとうございます」「いえいえ、なんのなんの! ささ、狭くて汚いところですが、どうぞお座りください」「はい、では遠慮なく……わぁ!」 セーラ姫は目の前の山盛りの料理に目を輝かせていた。 決して綺麗とは言えない、木製のテーブル。乗っているのは山盛りの肉と、野菜のスープ。そして、ジョッキに注がれたビール。おおよそ彼女のような高貴な人物にはふさわしくない場所だ。「いいのかしら、お姫様をこんなところに呼んでしまって……」「いいじゃないですかぁ、大勢のほうが楽しいですよぉ」「そうじゃなくて!」「構いませんよ。わたくしこのようなお店は初めてで、寧ろ非常に嬉しいです。こんな料理も見たことがなくて……」「だろだろ!? この店はきたねぇけど料理と酒はウマいんだぜ」「はぁ、全く……」 呆れ気味にリコは頭を抱えていた。そして、ディオとロッカはそんなやり取りに苦笑いを浮かべていた。 事の発端は、女王との謁見の後。 どういうわけかディオはセーラ姫に別室に呼び出されたのだった。それも、他のパーティメンバーには秘密裏に。 怪しいと思ったルギーはこっそりと忍び込んで覗き見していた。が、すぐに城の衛兵に見つかって失敗に終わってしまったのだが。 ――やはり怪しい。 そう考えた彼は、思い切って今回の作戦を実行することにした。 名付けて、 『姫様と勇者様をカップリングさせよう 愛のキューピッド合コン成立計画』 要するに姫と勇者と一緒に一杯飲み明かし、互いの親睦を深めてしまおうという作戦だ。これを聞いたときのリコとロッカは目が点になったのは想像に難くない。「あのねぇ! そんな恐れ多いことできるわけないでしょ」「あ、でも意外といけるかも知れませんよぉ。さっき女王様は『もし頼み事があるならば遠慮なく言うが良い』っておっしゃっていましたし